
身長が伸びるってどういうこと?子供の身長が伸びるメカニズムを知ろう
あなたは、子供の身長が伸びるメカニズムを知っていますか?
赤ちゃんで産まれたときから、日々、身長が伸びていきますが、体の中では何が起こっているのでしょうか。
今回は、身長が伸びるメカニズムについて細胞レベルにまで話を掘り下げて、子供の身長が伸びる仕組みについてお伝えしていきたいと思います。
「身長が伸びる」=「骨が成長する」
「身長が伸びる」といいますが、いったい何が伸びているのでしょうか。筋肉が伸びているのでしょうか?あるいは、骨が伸びているのでしょうか?
「身長が伸びる」とは「骨が成長する」ということです。成長期まっただなかの子供のレントゲン写真を撮ると、骨が成長している部分の様子がよく分かります。
関節の周辺部分をレントゲンで撮ってみると、骨の端っこの方に「えっ!骨折してる?」と一瞬びっくりするような、すっと横に1本線が入っていて隙間があるのが見えます。
もちろん、折れているわけではありません。実は、骨の両端に見える隙間は「骨端線(こったんせん)」という軟骨組織です。軟骨はレントゲンに映らないので、隙間があるように見えるのです。
この骨端線の成長が正に骨の成長そのものです。この部分が“骨の製造工場”のような役目をしていて、細胞が活発に増えている部分です。
ここで何が起こっているのかといいますと、骨端線の軟骨組織の細胞が成長ホルモンの分泌によって刺激されると、細胞分裂が始まり増殖していきます。
ホルモン分泌 ⇒ 細胞分裂 ⇒ 細胞増殖 ⇒ ホルモン分泌 ⇒ 細胞分裂 ⇒ 細胞増殖 ⇒・・・
子供の身長を伸ばすためには成長ホルモンの分泌がポイントとなります。
成長ホルモン分泌・刺激、細胞分裂、細胞増殖という、この一連の作業を骨端線で繰り返すことによって新しい骨がどんどん作られます。
そうすると骨はどんどん長くなりますね。これが身長が伸びる仕組みです。成長期というのは、要するに、骨端線での細胞分裂が絶えず行われている時期というわけです。
成長ホルモンが分泌されないと子供の身長は伸びない
成長ホルモンが刺激を与えることによって、細胞の分裂が始まります。
従って、子供の身長を伸ばしたいというとき、骨の成長において成長ホルモンは欠かせない存在です。
つまり、身長が伸びる仕組みの中で日々分泌される成長ホルモンは、この製造工場の司令塔で、「身長を伸ばせ〜!分裂しろ〜!増殖しろ〜!」と毎日、細胞に向かって指示を出す、とても重要な役割を果たしています。
もし、指示を出す司令塔がいなかったら、その工場はどうなるでしょうか。ストップしますね。
骨の製造工場も同じで、何らかの原因によって成長ホルモンが分泌されなかったり、分泌量が少なくなると身長の伸びはストップしてしまいます。
成長ホルモンが分泌されていない場合は、成長ホルモンを分泌している脳の下垂体という器官に異常があったり、そもそも遺伝子に異常があったりなど、その原因はさまざまです。
検査してみたら成長ホルモンが分泌されていないことが分かった、という場合には治療が必要で、多くは成長ホルモンを毎日注射することで身長が伸びるようになります。
また、成長ホルモンの分泌量が減ったというケースでは、病院で調べて脳の下垂体などに異常がない場合、原因としてまず第一に考えられるのが睡眠不足です。
成長期における子供の成長ホルモンは睡眠中に最も多く分泌されていますので、睡眠不足になれば、成長ホルモンが分泌される量が減るのは当然です。
小学生は学校がある平日は起床時間が決まっていますから、早めに寝かせることで睡眠時間をきちんと確保することが大切です。
また、昼休憩や放課後に運動させて、しっかりと体を動かすことで、疲れて、自然と早く深い眠りにつけることもありますので、成長ホルモンを分泌させるには体を動かす習慣も大切にしてください。
身長を伸ばす「三つの生活習慣」
子供の身長を伸ばすために必要な成長ホルモンの分泌には、睡眠と運動が大切なことが分かりました。実は、身長を伸ばすのに必要な、“三大要素”というものがあります。
子供の身長を伸ばすためにやるべきことの三つのうち一つは睡眠です。前段で説明したように、成長ホルモンの分泌は睡眠中に増えるからというのが睡眠が大切な理由です。子どもはたくさん寝なくてはなりません。
二つ目は栄養です。そもそも背を伸ばすためには“材料”となるものが体に届かなければ骨はできませんので、しっかりと食べて栄養を取ることが必要です。
骨を作るための栄養というと、「骨=カルシウム」というイメージかもしれませんが、カルシウムだけでは骨はできません。骨端線の軟骨細胞が増えると、骨の元になるコラーゲン繊維が作られ始めます。
コラーゲンはアミノ酸、つまりタンパク質から作られていますので、肉・魚・卵などのタンパク質はとても大切な“材料”となります。そして、このコラーゲン繊維にカルシウムとリンが吸着すると、骨として完成です。
子供の背を伸ばす為に必要な栄養素の一つであるカルシウムは、桜えびやチーズ、ひじきなどに豊富に含まれています。さらに、リンが多く含まれているのは、海苔やたたみいわし、凍り豆腐などです。
骨になる食品というと、牛乳を真っ先に思い浮かべますが、牛乳が勧められていたのは食糧事情が悪い時代の話です。食べ物が豊富にある現代では、必ずしも牛乳にこだわる必要はなく、いろいろな食品からタンパク質、カルシウム、リンを取ることが大切です。
言うまでもありませんが、この三つの栄養素だけでなく、他の栄養素もバランス良く食べることが基本です。
さて、身長を伸ばす方法の三つ目は運動です。運動そのものが成長ホルモンの分泌を促すという直接的な役割もあれば、前段で説明したように適度な疲労感によって寝付きが良くなったり、深い睡眠の助けになるなど、間接的な役割もあります。
また、運動することでおなかも空きますので、食欲アップも期待できます。さらに、ジャンプなどの運動方法は、骨端線を刺激し、骨の成長を促すことにつながります。
三つの生活習慣のうちどれが欠けても、骨の成長は順調に進みません。「睡眠・栄養・運動」は背が伸びる方法として常にセットだと考えて、習慣化するようにしましょう。
子供の身長を伸ばす「三つのホルモン」
身長の伸びには、なぜか、いつも「3」という数字が関わっています。実は、骨の成長にホルモンも3種類が必要です。
まず、「成長ホルモン」は司令塔でこれがなければ骨の成長は始まらないという大切な存在でしたね。
二つ目が「甲状腺ホルモン」です。これは、喉にある甲状腺から分泌されるホルモンで、細胞の新陳代謝を活発にする働きがあります。
つまり、“骨の製造工場”骨端線の細胞分裂を活発化させるのに甲状腺ホルモンも一役買っているというわけです。
また、成長ホルモンの分泌も促していますので、甲状腺の機能低下などが原因で甲状腺ホルモンが出ていないという事態になると、これまた成長ホルモンの分泌が悪くなるという致命的な状況に陥り、身長が伸び悩むことになります。
もし、甲状腺ホルモンの分泌がない場合には、成長ホルモンと同じように、注射による治療をすることで回復が見込めます。
三つ目が「性ホルモン」です。思春期になると活発に分泌されるホルモンで、成長ホルモンの分泌を増加させたり、骨に直接働きかけて、骨の成長を促進します。
小学生の子供が思春期に入って急に背が伸びるのは、性ホルモンのおかげです。
身長が伸びなくなると骨の中はどうなるの?
このように三つの生活習慣、また三つのホルモンの働きによって、骨の成長はどんどん進んでいきます。
しかし、骨端線での軟骨組織の細胞分裂はずっと続くわけではないことは、みなさん、もうお気付きかもしれません。身長はあるときを境に伸びるのをやめてしまいますよね。
では、このとき、骨端線はどうなっているのでしょうか。
大人のレントゲン写真で関節部分を確認してみると、成長期には骨の端っこに見られた隙間のようなもの、つまり骨端線が見当たりません。
「骨端線が閉じる」という表現をすることもありますが、「骨端線がない、骨端線が閉じる」=「骨端線の軟骨組織がすべて硬い骨になった」ということです。
骨になれば、レントゲン写真にきちんと映るようになります。こうなると、もう骨端線の軟骨組織では細胞分裂は行われておらず、骨の成長は終わりを迎えます。
残念ながら、それ以上、身長が伸びることはありません。
身長が伸びるメカニズムを知ると、骨の成長は骨端線が閉じるまでの非常に少ない期間の内に行われる緻密な作業なのだと実感させられます。
だからこそ、骨端線が存在しているうちにできることをやる必要があるのです。「いつか終わりが来る」ことをしっかりと心に刻んで、お伝えした三つの生活習慣を毎日の生活で実践していっていただきたいと思います。
